原子力発電への追い風

原子力発電の動静は電力会社にとって、常に変わることのない最大の関心事です。2022年は原子力発電に対する追い風が強まりました。その背景をしっかりと把握しておきましょう。

原子力発電の復活

2023年度は原子力発電への期待が高まる1年になりそうです。

東日本大震災以来、電力業界は原子力発電の停滞に悩んできました。福島第一原子力発電事故を背景に、世論は原子力発電に極めて厳しくなりました。これに伴い、安全審査のハードルが高くなり、運転停止を命ずる司法判断が出てきたのです。震災以降、再稼働を果たしたサイトは関西電力、九州電力、四国電力の3社にとどまり、このほかの原子力発電所は依然として復帰を果たしていません。原子力の再稼働を実現し、収支環境を大きく改善することが電力業界の悲願なのです。

脱炭素の切り札は原子力

このような局面を変えたのが、脱炭素の動きです。政府が2021年10月に発表したエネルギー基本計画では、2030年度の温室効果ガスを46%削減(対2013年度比)すること、このため発電電力量の20%~22%を原子力発電とすることが明記されています。

このような高い原子力シェアを実現するためには、既設の原子力発電の再稼働と長期運転を達成する必要があります。非化石エネルギーである原子力発電の重要性が見直されたわけです。

エネルギー安全保障への意識

加えて2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まりました。ロシア産天然ガスの供給不安が高まるにつれ、海外でも原子力発電を見直す動きが顕在化してます。日本でもサハリン産天然ガスの供給不安が現実のものとなり、エネルギー安全保障の観点から、否応なく原子力発電を活用する必要が出てきたわけです。

原子力発電所の長期運転の必要性

現在、原子力発電所の運転期間は原子炉等規制法により、最大で60年と定められています。原則40年に加えて、1回限りの認可によりさらに20年の追加が可能となっており、合わせて60年が最長期間となっているのです。2023年の通常国会では法改正により、この期間を延長する動きがあります。具体的には安全規制の強化や司法判断などにより原子力発電所が停止した期間に相当する追加運転を認めようというのです。

1970年代に新設された原子力発電所は既に50年近く稼働しています。60年の上限期間に近づいていることから、安全確保を前提に、稼働期間の延長を認めようというのです。

就活生にとって原子力稼働に関する基礎知識は必須

電力業界を目指す就活生にとって、このような知識は不可欠です。脱炭素と安全保障の必要性から原子力発電の高稼働が求められていること、法改正によって長期の稼働を実現しようとしていることを、十分に把握して就活に臨みましょう。