ロシアのウクライナ侵攻

ロシアのウクライナ侵攻は2022年の最大のトピックで、電力経営を大きく左右する要因です。就活の際、必ず話題に上ることでしょう。基礎的な情報をしっかり把握しましょう。

 

サハリン2の実質国有化

日本は年間約7,000万tのLNG(=液化天然ガス)を輸入しています。これは中国と並んで世界最高水準です。このうちロシア産は約600万t、LNG輸入の9%となっています。

ロシア産LNGはサハリン2プロジェクトによるもので、三井物産(12.5%)、三菱商事(10.0%)が権益を所有していました。

ウクライナ侵攻後、プーチン大統領はノルドストリーム等を経由した、ヨーロッパ向け天然ガス輸出を減少させています。このため、日本向けLNGにも同様の動きを見せるのか、日本政府・エネルギー業界は懸念していました。

2022年6月30日、プーチン大統領はサハリン2を運営するサハリンエナジー社から新しいロシア企業(=サハリンスカヤ・エネルギヤ社)に変更するとの大統領令に署名、即日施行しました。

これを受けて三井物産、三菱商事両社は新会社への出資継続を申請、ロシア政府はこれを承認しています。

エネルギー業界ではJERA(東京電力・中部電力の合弁会社)、九州電力、東京ガスが新会社との調達契約締結を完了したと報じられており、10月上旬時点で、日本企業の権益・契約は形式的に継続しています。

しかし本格的な冬の到来を控え、ロシア産LNGを確保できるのか、懸念がぬぐえない状態が続いています。電力・ガス業界は現時点で必ずしも有効な手立てを打てていない状態と考えられます。

 

LNGスポット価格の高騰

2月のウクライナ侵攻によって、国際ガス価格は高騰・乱高下を繰り返しています。とりわけ、ヨーロッパの天然ガス不足の懸念から、欧州価格が上昇、アジア向け価格もこれにつられて上昇する動きとなっています。

つまり、ロシア産ガス供給の不安を受けて、ヨーロッパとアジアが天然ガスの獲りあいを行っているわけです。この結果、例えばメキシコ湾岸を出た米国産LNG船が欧州とアジアの価格変化に応じて、当初の行先を変更するといった現象まで起きています。

JKM(Japan Korea Marker、=アジア向け価格)は一時、100ドル/MMBTU(百万ビィーティーユー、またはエムエムビィーティーユーと発音してください)を記録、その後も夏場に高騰するなど、高いレベルを継続しています。

このため日本の電力会社はスポットLNGを高価格で調達せざるを得ず、このことが日本の卸電力市場の価格高騰に繋がっています。

 

まとめ

このようにロシアのウクライナ侵攻はLNG調達を量と価格の両面から圧迫しています。この問題は長期化しており、電力会社はまだ解決できずにいます。

インターンや面接の際には、これらの基礎情報をしっかりとおさえて臨むことが必要不可欠ですのでお忘れなく。